関連ページは、「現代不法行為法理論」の中の「経済学的抑止論」(Economic Deterrence Theory)
Susumu Hirano, Professor of Law, Faculty of Policy Studies, Chuo University (Tokyo, JAPAN); Member of the New York State Bar (The United States of America). Copyright (c) 2014 by Susumu Hirano. All rights reserved. 但し作成者(平野晋)の氏名&出典を明示して使用することは許諾します。 もっとも何時にても作成者の裁量によって許諾を撤回することができます。 当サイトは「法と経済学」の研究および教育用サイトです。
【未校閲版】without proofreading
ジョン・ロールズによる批判 〜公正としての正義、分配に於ける正義、他〜
「規範的法哲学者」(normative legal philosophers)とは…
ドゥオーキンによる批判
「法と経済学」と「シカゴ学派」の歴史
アメリカ法学に於ける学際研究の歴史と、法と経済学とカラブレイジ
「パレート最適」よりも「カルドア・ヒックス効率」の方が「法」の経済的分析に適する理由
【未校閲版】without proof
前回からの続き、或いは、まとめ
buzz-words(決まり文句)を理解すること。∵世界の共通語=global std.
descriptive("is")(叙述的) ←→ normative("should")(規範的)
「法」とは: 法的強制力のある規範(legally binding "norms")
六法とは: 憲法、...。
公法と私法 ...憲法:Constituion、行政法:Administrative Law、刑法:Criminal Law、刑事手続法:Criminal Procedure ... 民法:Civil Law、民事手続法:Civil Procedure、商法:Commercial Law、会社法r:Corporations
公法(*1) “ 国家・公 対 私人” (「私人」には「法人」も含まれる:「自然人」+「法人:legal entity」)憲法(統治機構:governance +人権規定:human rights(*2))、行政法、刑法(罪刑法定主義:"no punishment w/o law"、法の支配/法治国家:rule of law)、...。(*1) 狭義の「公法」は、憲法および行政法。言葉の「多義性」(ambiguity)に注意←→「曖昧性」(vagueness)経済法 (独占禁止法 +景品表示法)
(*2)例えば、第41条(国会の地位)「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。 The Diet shall be the highest organ of state power, and shall be the sole law-making organ of the State.」、
第29条(財産権)「財産権はこれを侵してはならない。The right to own or to hold property is inviolable.」、
第21条2項(検閲の禁止・通信の秘密)「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。No censorship shall be maintained, nor shall the secrecy of any means of communication be violated.」
私法 “私人間の規範”本講座では特に「Property」(含、Intellectual Property:IP:知的財産権法)、「契約法:Contracts:"K"」、および「不法行為法:Torts」を分析する。
もっと広い諸法律分野にも適用可能--- e.g., 会社法(*) ("e.g."="exempli gratia"="for example")(*)例えば「D&O」と「corporate governance」論に「法と経済学」が関係して来る。..."agency costs" → 最適なコストで最大の効果を。 民法 Propertyとは...、Contractsとは...、 Tortsとは...。 See 平野 『アメリカ不法行為法』, infra, at 53-54.「物権法(Property)incl.知財権(IP)」
「契約法(Contracts)」 -- 約束、申込+承諾=意思の合致 (+"consideration":約因)、全ての約束が法的強制力を付与される訳ではない。
「不法行為法(Torts)」--平野 『アメリカ不法行為法』, infra, at 27-53.---- 他人の権利侵害、損害、賠償 民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 (米)「過失+因果関係+損害=賠償責任」
「親族相続法((Family Law, Trust, etc.)」
実体法と手続法 ... 民法、刑法、行政法 ... 民事手続法、刑事手続法、行政手続法、証拠法(admissibility、伝聞証拠:hearsay, 秘匿特権::attorney-client privileged communications, etc.)
一般法と特別法 ... 民法に対する商法や会社法。不法行為法に対する製造物責任法 ...
大陸法と英米法 ... 比較的に、前者は実体法&演繹法:deductive reasoningを重視、後者は手続法&帰納法:inductive reasoningを重視 → 前回の講義に於ける英吉利法律学校の話。
実体法、手続法(「民事訴訟法」:cvil procedure、「刑事訴訟法」、「証拠法」:evidence)
なお、「法と経済学」は主に効率性:efficiencyから「規範」を論じる。しかし講義のテキストは、規範の正当性を得る為には効率性のみならず倫理哲学等からの支持も必要、という点をも強調している。
E.g., 「自己責任」v.「他人の所為(せい)」(personal responsibility v. blaming others) See 『アメリカ不法行為法』 at 332-42.
熱いホット・コーヒーは欠陥か? Id. at 2-10. / ファスト・フードの食べ過ぎで肥満になったのはチェーン店側の責任か? / シュレッダーで子供が指を切ったのは欠陥か? / 公園のベンチで子供が後ろにもたれかけて枝が刺さったのは市の責任か? /
<以下は後に講義で扱う>
「Property」上のトピックの例は、e.g., 「共有地の悲劇」(資源涸渇、環境法)v. 「反共有地の悲劇」(私有財産細分化、財産法)
「契約法」上のトピックの例は、e.g., 「協力解による」余剰価値の創出(法と経済学では「財産法」に於いて説明する)。
「余剰」(surplus)とは、総満足(総便益)からそれに必要な総費用を差し引いた額。 See奥野『ミクロ経済学入門』 infra, at 32.
はしがき pp. i-v.
p,1 法の進化 (プライバシー権の確立を例に挙げて)
pp. 1-14. コースの引用と巨視的な視点の重要性、 ホットコーヒー訴訟を例に挙げて、危険(損失)の分散理論とその欠点、一方的危険と双方的危険の違い、資源の稀少性ゆえの効率性と「最適な」こと(optimal)の重要性、生命の為にはコストを惜しまないという概念が神話に過ぎないとするカラブレイジの指摘と「アルマゲドン」、幸福な王子、B<PL。
<総論>
前回からの続き
巨視的(macroscopic)な(i.e., 社会的な目標から望ましい法を探る)点に於いて、これまでの法律学の以下の特徴に対峙: @当事者間の利益衡量を量る、A条文・文言解釈。 ("i.e."="id est"="that is")
法律学: 判例分析を通じた解釈の一貫生の発見(クーター&ユーレン, infra, at 11.)。
法と経済学: 極大化、均衡、効率、等々の概念は法にとっても重要(クーター&ユーレン, infra, at 13.)。 ∵法が基準として求める「合理的」(reasonable)人間行動を説明する基本概念である。(クーター&ユーレン, infra, at 15.)
- 経済学では同じ「合理」でも、「rational」という。目的が反社会的でも、手段が不道徳でも、「rational」たり得る(クーター&ユーレン, infra, at 15.)。 ← 「利」に適った… See 『アメリカ不法行為法』 at 307-08. すなわち「合“利”的」と訳すべきもの(平野)。
- 法律学では「合理」とは、「reasonable」という。他者の利益を自己利益同様に尊重したり、社会で共有される価値観や規範を守ることも要求される(クーター&ユーレン, infra, at 15.)。 ← 「理」に適った… See 『アメリカ不法行為法』 at 307-08.
- 尤も法律学に於いても効率性等は「reasonableness」の要素の一つのはず(クーター&ユーレン, infra, at 16.)。
- 近年では「合理的選択論」:"rational choice theory"(『アメリカ不法行為法』 at 216 n.10)への懐疑("bounded rationality":限定合理性, id. at 352-53.)も提示されてきている。 → 「法と認知科学」 E.g.,ケネディー大統領のピッグス湾事件の失敗に関する演説:「"勝利"には自称"父親"が沢山名乗りを挙げるけれども、"失敗"は孤児である。」"Victory has a hundred of fathers and defeat is an orphan." cited in 平野晋「イースターブルック判事の法廷意見と『法と行動科学(認知心理学)』」『民事司法の法理と政策(下巻)』236頁(商事法務、2008年)→ 成功は自分の手柄にしたがるけれども、失敗は他人のせいにしたがる不合理な人間=「帰属の誤り」="attribution error"。(『アメリカ不法行為法』 at 401-02.) その他の例: 離婚率が50%のアメリカで、結婚したてのカップルは、将来自分たちは絶対に離婚しない、と不合理な判断をしている!? ((『アメリカ不法行為法』 at 375 (self-serving bias).))
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See平野晋『アメリカ不法行為法---主要概念と学際法理』342-44頁(中央大学出版部、2006年)の第二部、第II章.
「法と経済学」および「批判的法学研究」(CLS: critical legal studies)との比較に於いて、第三番目の法の原理的な学派としてのジョン・ロールズのことを、倫理哲学的に不法行為法を分析する指導的学者のGeorge P. Fletcherは以下の論考に於いて次の様に指摘しています。
出典: George P. Fletcher, Why Kant, 87 COLUM. L. REV. 421 (1987).
- 非功利主義者的な諸価値(nonutilitarian values)に法の原理を置こうと試みる第三のグループは、「規範的法哲学者」(normative legal philosophers)と呼ばれる。彼等は以下の二つの前提に立っている。@効用と効率を凌駕する「権利」を個人が有していること。および、A規範を構築することによって倫理的生活と法的生活を形成することが可能であること。
- 以上の前提に立つ中心的な著作は、JOHN RAWLS, A THEORY OF JUSTICE (1971)である。
- ところでロールズの「原初状態」の方法(Rawls' method of the original position)は、一方当事者が他方当事者を不適切に侵害乃至加害したか否かという典型的な民事法律紛争を解決する為のルールを余り教えてくれない。何故なら原初状態に於いては、カガイシャとヒガイシャの双方を満足させるようなルールを採用する余地など存在しないからである([T]here is no way in the original position to adopt a rule that would be satisfactory to both transgressor and victim.)。
Fletcher, Why Kant, supra, at 428-29.
有名な批判は、ドゥオーキンの以下の論文です。
Ronald M. Dworkin, Is Wealth a Value?, 9 J. LEGAL STUD. 191 (1980).
「法と経済学」は、社会に於ける富の極大化を善として、それ自体が目的化しているようです。
しかし、富の極大化自体が何故、善なのでしょうか?
法が本来目指すべきは、「福祉の極大化」(welfare)であるべきです。
「法と経済学」という比較的新しい学際的学問分野の出現に於いては、いわゆる「シカゴ学派」(Chicago School)がその勃興に貢献したという指摘を、しばしば目にします。
それでは一体、その法と経済学のシカゴ学派というものはどのように出現したのでしょうか?その歴史を簡潔に示すものとして、以下の論考の中から紹介しておきましょう。
出典: Minda, James Boyd White's Improvisations of Law As Literature, infra, at 157, 168-170.
アメリカでは古くから学際的に法律学を研究していた点を、倫理哲学的に不法行為法を分析する指導的学者のGeorge P. Fletcherが、以下の論考に於いて次の様に指摘しています。
出典: George P. Fletcher, Why Kant, 87 COLUM. L. REV. 421 (1987).
(n.17)Calabresi, Some Thoughts on Risk Distribution and the Law of Torts, 70 YALE L. J. 499 (1961).
(n.18) K. LLEWELLYN & E.A. HOEBEL, THE CHEYENNE WAY (1941).
この点についても、前掲George P. Fletcherが、以下の論考に於いて次の様に指摘しています。
出典: George P. Fletcher, Why Kant, 87 COLUM. L. REV. 421 (1987).
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"[E]very lawyer ought to seek an understanding
of economics" because [w]e learn that
for everything we have to give up something
else, and we are taught to set the advantage
we gain against the other advantage we lose,
and to know what we are doing when we elect.
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Oliver W. Holmes, The Path of the Law, 10 HARV. L. REV. 457, 474 (1897) cited in
Stephen G. Gilles, The Invisible Hand Formula, 80 VA. L. REV. 1015, 1042 (1994).
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